第32回全国中学校陸上競技選手権出場に際して

たくさんのご声援ご支援ありがとうございました。

           東雲中学校陸上競技部顧問・部員一同

 

第32回中学校陸上競技選手権

(8/19〜22 岐阜長良川陸上競技場)RESULTS

共通女子4×100MR

 予選6組  東雲中 大阪(山本・北村・中野未・酒井)

 50秒75 5着 準決勝進出

 準決勝2組 東雲中 大阪(山本・北村・中野未・酒井)

                 51秒17 7着

    49秒台が4チーム。その中で49秒79の記録を持つ東雲中がランキング3位で迎えた今大会。例年に比べ、やや記録のレベルが低いと予測していたのが大間違いとわかったのが大会1日目の予選でした。1組から49秒台のチームが続出。この2年の全国大会のこの種目のレベルからすると、51秒を切れば準決勝進出の条件と想定していたのだが、結果的には50秒86で予選敗退のチームができるほどのレベルの高さでした。

 午後2時55分予選6組8レーンに登場の東雲中。さすがに緊張しているのがよくわかる。ウオーミングアップ場となるサブトラックの雰囲気(男女併せて、各都道府県代表の94チームがバトンゾーンを取り合うように、リレーの足あわせ練習をする様子は戦場のようでした。)や、選手招集所で控える時の緊張感は彼女らの予想をはるかに上回るものでした。

 スタートは1回目5レーンの沖縄の那覇中がフライング。そのせいで、余計に緊張感が高まったような気がした。2回目の号砲で飛び出す山本。近畿大会以後、左足首を痛めて思うような練習ができていなかったので一番心配していた選手。左足の黒のサポーターが痛々しかったが、まずまずの走りで2走の北村へ。

 北村はいつものようにバックストレートで加速をするが、さすがは全国大会。内側のレーンの走者に追いつめられていく。3走へのバトンリレーはややロスがあるものの中野未来にバトンが渡る。中野未来も懸命に曲走路をひたすら走る。その頃には、もう東雲がトップでないのがわかる。

 4走の酒井にバトンが渡る。前の2つは抜けているもののあとは接戦である。準決勝進出は6組3着+5。何とか3〜4位には食い込みたいのだ。酒井は懸命に走るが、まわりも速い!7レーンの福井の明倫中との接戦もモノに出来ず、まさかの5位に沈む。

 ここから、正式記録の発表までがとても長かった。そのうちに酒井と北村が涙目でメインスタンドにやってきて、隣でうつろな表情で祈っている。補欠の中野愛里も小山も2人にかける言葉も見つからずうろたえている。「6組の結果・・・。」アナウンスが始まると共に、電光掲示板に表示されている文字を追う。『5 シノノメ オオサカ 50.75』この時にあわてて、プログラムに書き込んだ各組の4着以下のチーム数を数える。プラス6チームの5番目での準決勝進出が決まった!彼女らは、満面笑みになり、急に口数が多くなった。バトンワークもいくつかの失敗があり、納得できなかったのでしょう。もう一度全国の夢舞台に立つことができる喜びがどんどん大きくなったのだと思う。

    大会2日目。この日の最終種目が男女それぞれの4×100MRの準決勝となる。3組それぞれの2着と3着以下のチームで記録上位2チームが明日の大会最終日の決勝進出が決まり、決勝本番で失格にならない限り8位入賞が決まるのだ。どんなに強いチームでも、準決勝は細心の注意と集中力で臨まなければならない大切なラウンドである。(個人的な話になるが、思い返すのはちょうど2年前の全国大会。北海道は札幌の厚別競技場。「北の大地で夢の日本一を!」を合い言葉に臨んだ茨木西中時代に、上位を先行して走りながらバトン落下で夢破れた場面。準決勝の怖さは身に染みついているのだ。)サブトラックでは、「自分たちが、一番強いのだ!」ということを誇示するが如く、大きな声を出して気合い全開の練習をしている。その雰囲気に呑まれないように、とにかくやれる手を尽くし、めいっぱいの言葉をかけて彼女らを選手招集所に送り出した。

 この日は、前日までの岐阜特有の蒸し暑さとはうって変わって、時折バケツをひっくり返したような強い雨が降るコンディション。珍しく低温である。4時05分。準決勝2組。2レーンに東雲中。号砲一発。第一走者が夢に向かってスターティングブロックを強く蹴る。山本はわずかに動いて飛び出した。(厳密に言うと、フライングである。)1走から、差をつけられた。故障明けの彼女にとっては、質の高いレースを2本続けるのは酷だったようだ。北村も中野未来も酒井も、挽回を図るべく激走をしたが、どの走者も有効な決め手を欠いたままフィニッシュ。7着51秒17。どのチームも低温のために、記録が悪かったがこのタイムに自分たちの未熟さを思い知らされた。全国大会出場と記録の良さに満足していなかったか。謙虚さを忘れて浮かれてはいなかったか。確かにがんばってはいたが、全国の強豪校と肩を並べるには、まだまだ甘さはなかったか。肩を落として大阪のテントに帰ってきた4人は、お互い声を掛け合うこともなく泣いた。大粒の涙を落として、時折肩を振るわせながら・・・。

 競技場から宿舎への帰り道。夕暮れの長良川に架かる長良橋。左手前方の目の前には金華山。この小高い山の頂上には、かつて織田信長が天下統一を目指した岐阜城が見える。言葉少なに、足をひきずるようにとぼとぼと歩いていた彼女たちの夢は、今落城したばかり。でも、彼女ら(東雲中陸上競技部)の夢は、今はじまったところなのだ。大きな夢に向かって、見事な第一歩であったと思う。

    大会前日の開会式は、長良川競技場に隣接する長良川国際会議場の大ホールで開かれた。その開会式の帰り道での出来事。「わっー。大阪の人。お願い!大阪弁で何か喋って!!」Tシャツの背中にある『大阪』の文字を見て、いきなり沖縄のリレーチームのメンバーが声をかけてきたのだ。もうそこからは一気に友達モードに。別れ際に、「チバリョウー!(沖縄の方言で「がんばって」という意味)」と笑顔で手を振ってくれた。偶然にも、予選では同じ組を走り、閉会式の後には互いに記念写真を撮りあう大阪と沖縄の両チームでした。

    「それでは、みなさんごいっしょに!手をあわせて下さい。いただきます。」東雲中リレーチームの宿舎での食事は、中野愛里のかわいい一声で始まる。時には、隣り合わせた年配の他校の顧問の先生もつられて手をあわせる場面もあったくらいである。「個人でなく、チームで全国大会に参加できるって本当に楽しそうでいいですね。」と目を細めて他校の顧問の先生もおっしゃって下さる。先生も同感です。2日目の晩に中野愛里の隣で食事をしていたのが、大阪の河南中の男子砲丸投げ出場の岩崎選手。中野愛と同じ年齢になるとは思えないほど、体格や雰囲気が違う。中野愛里と手のひらをあわせてみると2倍ある。彼は、翌日、砲丸投げで4位入賞決めた。みんなで拍手をした。

    大会3日目は、メインスタンドの前方に座ってみんなで競技をしっかり見て勉強した。この日はNHKで生中継もあったこともあって、ずいぶん盛り上がった。どの種目の決勝も、日本一を決めるにふさわしい素晴らしい競技であった。男子110MHの決勝では、優勝候補のひとりであった選手が最終ハードルの10台目で足をひっかけ転倒。その後、あわてて起きあがって何とか決勝進出を決めたものの、その後まともに歩けない。右足首を骨折か捻挫をしたようである。そして、決勝。棄権するだろうと思われた彼の姿が8レーンにあった。右足首をテーピングでグルグル巻きにして立っているが、スタブロをセッティングしただけで、スタート練習もできない。「位置について」のコールがかかってスタブロに歩み寄るが、この動きでさえまともでない。きっとピストルが鳴っても歩き出すはずだと思っていたのだが、彼はピストルが鳴ると勢いよく走り出す。途中のハードリングで少しバランスを崩しながら、2着でゴール。そのまま倒れ込み動けなかった。

 彼は担架で運ばれた。彼の執念に涙が出るほど感動した。男子の走り幅跳び決勝も圧巻であった。7Mを超える大ジャンプが4回もあった。最終跳躍者の最後の6本目の跳躍は地元岐阜の長良中学の恩田選手。観客に手拍子をもらいながら、気迫の助走。4.7Mの追い風を受けながら大きなジャンプ。何と7M28の大記録で逆転優勝を決めたのである。中学生に無限の可能性を強く感じたパフォーマンスでした。「先生、全国大会ってすごいな」「陸上競技って感動するな」と口々に言った彼女たち。2年生は、「来年の全国大会の香川県の丸亀競技場に絶対行く!」と言い、3年生は「高校に行って、今度はインターハイに出たい。」と大きな夢に胸をふくらます。「3年後のインターハイは埼玉だよ。」と教えてやると大きくうなずいた。

    大会が終了して岐阜駅に向かうバスに乗り込む。「さよなら。岐阜県。私はもっとここに居たい!」と金華山に向かって酒井が叫ぶ。「私も!」とみんなが声をそろえる。6時57分名古屋駅発ののぞみ27号に駅弁をかかえて乗りこむ。駅弁に舌鼓をうちながら、北村が「来年、絶対私は全国に出る。秋のジュニアオリンピックも、大阪で勝って横浜に行く」ときっぱりと言いきる。あっという間に新幹線が京都に着く。大きな夢の旅が、一瞬のように終わってしまうような気がしたのか「先生、新幹線速すぎぃ。もっと乗っていたい。」と中野未来が口をとがらせる。ひとつの夢の終わりは、また新たなる大きな夢のはじまりでもあるのだ。未来は夢を実現するためにあるのだよ。みくる。言葉では言い尽くせない程のでっかい体験をした東雲中陸上部員を乗せた新幹線が定刻の7時49分に新大阪駅に到着した。

 

これからも、感謝の気持ちを忘れず、大きな夢に向かってひとりひとりが生き生きと活動してがんばれる部活動を目指して精進していきたいと思います。今後とも、よろしくお願いいたします。

 

                 東雲中学校陸上競技部顧問一同