三島中校区の大気汚染調査

   

1.研究の動機

 三島中科学部では、ぼくたちの身のまわりにある環境問題について取り組んでいます。そのひとつとして、三島中学校の校区全域の大気汚染調査を行っています。この大気汚染調査の方法や結果、考察などを報告します。

 三島中校区は国道171号線という交通量の多い道路があり、なんとなく「空気が汚れている」という感じはします。でも本当にそうなのか、どれくらい汚れているのか、それはなぜか、そういうことが言えるようになるためにも、まずは空気を調べてみなければなりません。大気汚染の調査は交通量の多い道路ぞいや静かな住宅地など測定する場所によって、大きなちがいが現れやすいのだそうです。

 どんな物質が多いときに大気汚染というのかにも、さまざまな汚染物質があるそうですが、その代表で、酸性雨の大きな原因にもなっている二酸化窒素にしぼりました。科学部の部員(27期生〜30期生)で、1998年と1999年の夏と冬、2年がかりで4回にわたって三島中校区45カ所の二酸化窒素濃度を測定してみました。

   
   

2.測 定 日

  

1998年  7月30日(木)午後2時〜31日(金)午後2時 天候:晴れ

1998年 12月17日(木)午後2時〜18日(金)午後2時 天候:晴れ

1999年  7月27日(木)午後2時〜28日(金)午後2時 天候:晴れ

 

1999年 12月15日(水)午後2時〜16日(木)午後2時 天候:晴れ

   
   

3.準 備 物

フィルムケース ろ紙 セロテープ 飽和炭酸カリウム水溶液 ひも 

ザルツマン試薬(市販のもの) 簡易比色計(自作) パソコンと専用ソフト

   
   

4.方   法

@二酸化窒素採取容器の作成

フィルムケースの内側にろ紙をテープでとめ、飽和炭酸カリウム水溶液5滴をしみこませませたものをつくります。45セットつくりました。

A二酸化窒素の採取容器のセット

採取容器をひもで、地上1.5mの高さに口を下に向けて取り付けます。取り付ける場所は道路沿い、住宅地、公園などで、三島中校区の45カ所に科学部員で手分けしてセットしました。(次の図の1〜45の地点)

 

B二酸化窒素濃度の測定

採取容器を24時間放置した後、回収してきてザルツマン試薬15mlを加えます。この薬品は二酸化窒素が多いほど、反応して赤紫色が濃くなります。10分ほどで反応が落ちつきます。この色の濃さのちがいを比色計で計ります。液体を試験管に移して比色計に入れ、片方から光を当ててもう片方で水溶液を通り過ぎた光の量を計って、吸収された光の量からパソコンで二酸化窒素の濃度が計算されます。

   
   

5.結   果

 

●三島中校区 二酸化窒素濃度測定結果

単位:ppm 1998年 1999年 平均

(0.06ppm以上は赤字で表示)

7月

30〜31日

12月

17〜18日

7月

27〜28日

12月

15〜16日

総平均 7月平均 12月平均
番号 測定場所
1 西河原市民プール 0.018 0.039 0.018 0.049 0.031 0.018 0.044
2 道路公団宿舎 0.045 0.037 0.021 0.041 0.036 0.033 0.039
3 ローレル東太田 0.031 0.038 0.026 0.034 0.032 0.029 0.036
4 西河原公園北 0.024 0.026 0.030 0.039 0.030 0.027 0.033
5 国道171号三咲町 0.087 0.085 0.047 0.076 0.074 0.067 0.081
6 国道171号三島橋 0.057 0.036 0.063 0.043 0.050 0.060 0.040
7 国道171号西河原 0.086 0.033   0.094 0.071 0.086 0.064
8 国道171号サニーハウス 0.061 0.045 0.045 0.083 0.059 0.053 0.064
9 西河原公園南 0.022 0.037 0.014 0.034 0.027 0.018 0.036
10 消防署西河原分署 0.018 0.029 0.028 0.044 0.030 0.023 0.037
11 疣水神社 0.020 0.024 0.011 0.042 0.024 0.016 0.033
12 三島丘郵便局 0.029 0.025 0.015 0.040 0.027 0.022 0.033
13 三島丘ウエスト 0.025 0.046 0.012 0.048 0.033 0.019 0.047
14 安威川茨木川合流点 0.026 0.041 0.018 0.037 0.031 0.022 0.039
15 西河原一丁目 0.039 0.026 0.022 0.071 0.040 0.031 0.049
16 三島中西 0.020 0.029 0.021 0.038 0.027 0.021 0.034
17 三島中正門 0.027 0.061 0.025 0.026 0.035 0.026 0.044
18 三島中グランド 0.030   0.021   0.026 0.026  
19 グレーシィ三叉路 0.039 0.033 0.018 0.051 0.035 0.029 0.042
20 三島公園 0.017 0.022 0.021 0.034 0.024 0.019 0.028
21 三島丘赤大路境界 0.013 0.032 0.017 0.081 0.036 0.015 0.057
22 JR安威川 0.027 0.019 0.012 0.032 0.023 0.020 0.026
23 JRトンネル 0.022 0.021 0.014 0.036 0.023 0.018 0.029
24 JRガード下 0.040 0.062 0.027 0.043 0.043 0.034 0.053
25 JR徒歩踏切 0.025 0.040 0.018 0.034 0.029 0.022 0.037
26 JR道路踏切 0.029 0.030 0.022 0.036 0.029 0.026 0.033
27 庄一丁目 0.012 0.039 0.020 0.026 0.024 0.016 0.033
28 派出所前 0.021 0.049 0.021 0.028 0.030 0.021 0.039
29 総持寺境内 0.017 0.032 0.013 0.037 0.025 0.015 0.035
30 八幡大神宮 0.021 0.026 0.017 0.031 0.024 0.019 0.029
31 総持寺公園 0.017 0.032 0.015 0.019 0.021 0.016 0.026
32 安威川庄 0.035 0.025 0.015 0.043 0.030 0.025 0.034
33 バス道路フジテック角 0.022 0.058 0.037 0.053 0.043 0.030 0.056
34 庄栄小信号 0.018 0.029 0.018 0.034 0.025 0.018 0.032
35 総持寺駅前町 0.022 0.043 0.008 0.031 0.026 0.015 0.037
36 バス道路誓源寺 0.036 0.046 0.032 0.038 0.038 0.034 0.042
37 庄栄小グランド 0.028 0.027 0.016   0.024 0.022 0.027
38 庄二丁目 0.028 0.029 0.016 0.043 0.029 0.022 0.036
39 バス道路千歳橋 0.026 0.032 0.019 0.058 0.034 0.023 0.045
40 阪急総持寺ガード下 0.033 0.030 0.031 0.042 0.034 0.032 0.036
41 阪急総持寺踏切 0.040 0.044 0.018 0.042 0.036 0.029 0.043
42 オークタウン 0.015 0.024 0.013 0.042 0.024 0.014 0.033
43 イートピア 0.022 0.050 0.018 0.042 0.033 0.020 0.046
44 中総持寺町 0.023 0.036 0.020 0.023 0.026 0.022 0.030
45 総持寺商店街 0.026 0.019 0.017 0.034 0.024 0.022 0.027
  平均 0.030 0.036 0.022 0.043 0.033 0.026 0.040
   
   
  ●二酸化窒素濃度 測定結果を地図上に表示

1998年  7月30日(木)午後2時〜31日(金)午後2時 天候:晴れ

 
   

1998年 12月17日(木)午後2時〜18日(金)午後2時 天候:晴れ

   
   

1999年  7月27日(木)午後2時〜28日(金)午後2時 天候:晴れ

   
   
1999年  12月15日(水)午後2時〜16日(木)午後2時 天候:晴れ
 
   
   
   

6.考   察

 4回の測定の結果からまず、国道171号線沿いではかなり二酸化窒素濃度が高いことがわかります。特に交差点付近では国の環境基準0.06ppmを上回る値が何度も出ていました。反対に濃度の低いところは、住宅地や公園、総持寺のお寺の境内などでした。二酸化窒素は、酸性雨や光化学オキシダントの発生など大気汚染の大きな問題となっています。これらの大部分は高温で物質が燃焼するとき、空気中の窒素が酸化されて発生するのだそうです。現在の主な発生原因は自動車によるものだそうです。

 三島中校区で、とても交通量の多い国道171号線で二酸化窒素濃度が高いのも、自動車が原因だと考えられます。<参照:国道171号線 二酸化窒素濃度調査(2000年8月)>交差点で濃度が非常に高いのは、たくさんの自動車が停車しながら排気ガスを出し続けているからでしょうか。また、校区を南北に通っている道路も路線バスやトラック、乗用車がたくさん走っているので、まわりの住宅地よりやや高めの値が出ているようです。三島中校区にはJR東海道線と阪急京都線も通っていますが、排気ガスを出さない電車が通っているせいか二酸化窒素濃度は他の道路や住宅地とあまりかわりません。

 1998年7月と1999年7月の夏場、よく晴れた暑い日の測定では、全般的に99年のほうがやや低い値に出ていますが、よく似た結果です。国道171号線沿いに高い値が出ていました。これに対して1998年12月と1999年12月の冬の晴れた日でも、99年のほうが全体に高めですが、よく似た傾向にあります。国道171号線の値は高いのですが、そのほかの住宅地の値も高くなっており、その差が夏場より小さくなっています。

 夏と冬とではまず、冬の方が全体に二酸化窒素濃度が高いことがわかります。夏(1998年と1999年)では平均0.026ppm、冬(1998年と1999年)の平均は0.040ppmでした。この地域の冬らしい天候は、北よりの風が吹く乾燥した晴天です。このことから国道171号線の自動車から排出される二酸化窒素が、北から吹く風によって南側の三島中校区全域に流されているのではないかと思いました。国道171号線から遠ざかるほど濃度は低くなっています。また冬場は降水量が少なくて湿度が低く空気中の水蒸気量が少ないので、空気中の水分に二酸化窒素が溶け込むことも少なく、そのぶん空気中の二酸化窒素濃度が下がらないこともあるかもしれません。さらに夏場の冷房は電気が主ですが、冬場の暖房には灯油やガスの燃焼によるものも多いので、各家庭から排出される二酸化窒素の量も増えているのだろうと思います。これらの原因によって、冬場は二酸化窒素濃度が三島中校区全体で高くなっているものと考えました。

 これまでの調査で自動車の交通量の多い国道171号線やバス通りで二酸化窒素濃度が高いことがわかりました。また夏よりも冬の方が校区全体で濃度が高くなることもわかりました。これまで4回とも平日の日に行いましたが、交通量の変わる休日や、雨やくもりの日など、また春や秋のような別の条件で測定してみるとどうなるだろうと思いました。今後も取り組んでいこうと思っています。

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